2011/03/08(火)日立がHDD事業(HGST)をWDに売却

ものすごく久しぶりです。会社のblogを書くようになってから、個人のblogまでかまってられないという気分だったのですが、たまには会社を離れてどうでもいい話を書きたかったので。

news - IBM→日立→WD (404 Blog Not Found)

あたりでまとめられている話からつらつらと。

弾氏の記事を勝手に要約
  • 日立がHDD事業を売却したよ
  • もうHDDは終わったよね (少なくともコンシューマー向けには)
  • クラウドインフラではまだまだHDD頑張るけど、一般の人が使うものじゃないよね
  • よくこんな高値で売れたよね
って話。

確かにコンシューマーというか、クライアントPCからHDDは姿を消しそうですね。業務用であろうとも、利用者の手元にある端末はどんどんと半導体ベースに置き換わっていく気がします。一方で、クラウド側ではますますストレージの需要は増していて、今後も当面主力はHDDだと思われるのですよ。この辺は弾氏の書いているとおり。

だから、HDDの需要がなくなるわけではない。
なのに、なぜ日立がHGSTを手放したかというと、単純にHDD単体では儲からないからでしょう。
日立はHGSTという会社でHDDを作ってもいましたが、そのHDDを組み合わせた応用商品であるストレージシステムも作っています。というより、一定以上の規模のストレージでは世界一でしょう。日立は自社ブランドだけではなく、あちこちのブランドに対してハイエンドストレージをOEM供給しています。
このストレージシステムには当然HGSTのHDDが使われていると思われがちですが、実際には他社のHDDも使われています。安くて良い品であれば、グループ企業外の製品でも採用するんだそうです。
ということで、日立としてはHGSTのような一部品メーカーを手放したとしても、ストレージ市場では引き続き十分な存在感を保つことができますし、むしろHDDという採算の微妙な商品を切り離して、高付加価値で利幅の大きいハイエンドストレージに集中した方がグループ全体での損益は良くなるのかもしれません。

ところで、HDDの採算性が微妙というのは、HDDという「部品」の低価格化によって粗利が削られているだけでなく、好不況の波が大きいからではないかと思われます。少なくとも今までは、HDD出荷数の大きなボリュームを占めているのはクライアントPC向けだったと思われます。このクライアントPC、とにかく流通量の増減が激しい。好景気になれば個人も企業もPCの新規導入に走るし、不景気になれば買うのを止める。さらに、Windowsの新バージョンの発売タイミングだとか、Intelのチップセットのバグだとか、他の代替不可能な部品メーカーの都合でぴたっと流通が止まったりする。大量消費財メーカーのような設備産業にとって、需要の波というのは経営に対する不安定要因でしかありません。

じゃあ、HGSTを買ったWDはどうなのかというと、これまた弾氏が書いているように、今後クライアントPCからHDDが無くなってゆくというところに活路があるんではないかと思うわけです。クライアントPCはHDDの大量需要を生み出していましたが、先に書いたとおり需要が著しく不安定です。もし、HDDからクライアントPCの需要がなくなったとすると、残る需要はエンタープライズのみです。しかも、このエンタープライズ市場はクラウド化により需要の増加率が安定すると推測できます。
本来、マクロで見ればデータの増減=ストレージの需要は一定のペースで増加していくはずなのですが、今まではクライアントPCの時と同じように、サーバOSやハードウェアアーキテクチャの更新というイベントによって需要の波ができていました。しかし、クラウド化されたインフラでは、ハードウェアアーキテクチャのレイヤがクラウドという「サービス」に隠蔽されるので、ユーザ企業からは見えなくなります。つまり、ユーザ企業はただストレージの容量を求めるのみで、アーキテクチャの更新に合わせた設備の更新のような、波が発生する可能性が低くなるのです。
複雑な要素が絡んだ予測不可能なクライアントPCの波を離れ、需要の予測がしやすいされるエンタープライズをメインターゲットにするのであれば、以前よりも利益を出すことが幾分かは楽になるのではないでしょうか。

しかし、クライアントPCという大需要原を失うことは、絶対的なHDD需要の減少を意味します。安定はするものの、全体の需要が少なくなるという状態では、多くのメーカーが生き残ることは難しいでしょう。現在でもHDDのメーカーはそう多くありませんが、今後はさらに厳しくなってくるものと思われます。
そんなことを考えると、HDD専業メーカーであるWDがHGSTを買収して規模を拡大し、未来に残る唯一のHDDメーカーを目指したとしても不思議ではないと考えられるのです。


思う、思うと適当な表現が続いておりますが、わざわざ数字を調べるほどには気合いが入っていないということで。ああ、会社のblogと違って気が楽だなぁ。