2010/09/03(金)いますぐ個人で使うIPv6接続サービス

そろそろIPv6の季節。
ふと「今すぐ」個人がIPv6でインターネットを利用する*1にはどういう手段があるのだろう、という事が気になったので調べてみた。

IPv6の大規模トライアル、ドワンゴ、ミクシィ、ヤフーらが参加 (INTERNET Watch )
という話もあるし。

おそらくネイティブ接続・デュアルスタック接続で利用できる個人向けIPv6サービスはない。これは、NTTのフレッツ網でインターネットに抜けるIPv6パケットを通すことが困難だという事に起因している。そのため、個人がIPv6を使うには、何かしらのトンネルサービスを利用することになる。

トンネルサービスにはネットワーク型と端末型がある。
ネットワーク型は、自分用に複数のIPv6アドレスが払い出されるもので、自宅内のネットワークすべてをIPv6化することが可能だが、トンネルの終端に対応したルータを用意する必要があり、手軽ではない。また、利用する回線が限られる場合もある。
端末型の場合は、自分が利用するパソコン自体がトンネルを張るため、ルータを別途用意する必要はない。但し、IPv6化されるのはそのパソコンのみとなる。場合によってはモバイル環境でも利用できるため、非常に手軽だ。
タイプ提供事業者サービス名費用利用の前提
ネットワーク型IIJIPv6トンネリングサービス無料IIJmioの固定IPフレッツ接続サービス限定
5040円(ADSL), 8400円(フレッツ光)
freebitFB Feel6無料なし
YahooBB!IPv6インターネットサービス無料Yahoo!BB 光フレッツコース限定
提供地域限定
端末型IIJIPv6仮想アクセス(IIJmio)
IPv6仮想アクセス(IIJ4U)
無料IIJ4U/IIJmioの接続サービスを契約していること(モバイルOK)※
モバイルアクセス無線LANなど、315円~
OCNOCN IPv6315円/月OCNの契約があること※
バリュープラン 262.5円~
※印のサービスは、契約さえあれば各社の回線以外からでも利用可能(但し保証外)
ぱっと見、FB Feel6が無料且つ回線の縛りがないので手軽に見えます。
ただ、対応環境を用意するのがちょっと面倒でしょうか。Linux/BSDを設定できる人なら問題なさそうですが、Windows用の接続ソフトが更新されていないようなので、最近の環境に導入できるかどうか?

IIJのIPv6仮想アクセスは、IIJの接続サービスの契約があれば無料で利用できます。保証もサポートもありませんが、他社回線でもなんとなく使えますので自宅の環境を変えずに*2とりあえずIPv6を使うには楽かもしれません。
IIJの接続サービスで一番安いのが、IIJmioモバイルアクセスシリーズ(315円~)なので、ダミーでこれを契約しておけばよいでしょう。
接続方法はPPTPなので、WindowsやMacの標準クライアントで接続OK。
面倒であれば、無料で配布されているIIJモバイル セキュアリンクを使うと手軽に設定できます。(これ、IIJモバイルが接続されていなくても制限無く使えるんだよね)

ガッツのある使い方としては、3G回線*3と組み合わせて移動中にIPv6と言うのもありです。


OCN IPv6も同じような条件ですが、OCNの契約(252.5円~)に加えてIPv6サービスの料金(315円)が加算されるので、比較をすればお高めです ;-)


ということで、なんだかIIJの宣伝みたいになってしまいましたが、結局それが一番楽そうなんじゃないかなと言うことにしておきます。
他に何かいい方法あったら教えてください。

*1 : フレッツ閉域網じゃなくて

*2 : ブロードバンドルーターに「VPNパススルー」機能があればたぶん大丈夫

*3 : IIJモバイル以外でも使える

2010/08/23(月)クラウドインフラの構築は異文化交流(書籍:Googleクラウドの核心)

IIJ 次世代モジュール型エコ・データセンター実験



先頭を切って公開された首藤さんの記事の公開を皮切りに、昨日公開されたあきみちさんの総まとめまで、皆さんいろいろな観点でまとめられた記事が公開され、IIJが実施している次世代モジュール型エコ・データセンター(通称コンテナDC)の話題がプチ盛り上がっています。
などと第三者風に書いていますが、そもそもこのブロガー向け見学会の企画&説明をしている本人が私なので、大変自作自演的というかどうも皆様ありがとうございましたその節は大変お世話になりましたなどなど。

掟破りの「ブロガーミーティングを開催してきました(中の人)」的なエントリを書こうかと思ったのですが、レポート自体は皆さんの記事を参照していただく方がおもしろいと思うのでパスしときます。

Datacenter as a Computer

今回は、この見学会のレポートを書いていただいた首藤さんが監修されている、Googleクラウドの核心(日経BP)の話を実験と絡めて書いてみようかと思います。*1
Googleクラウドの核心
ルイス・アンドレ・バロッソ、ウルス・ヘルツル (著)
丸山不二夫、首藤一幸、浦本直彦 (監修)
高嶋優子、徳弘太郎 (翻訳)
日経BP社
本書は元々The Data Center as a Computerとして刊行されている洋書の翻訳であり、Googleの巨大コンピューティングの一端について解説した本になります。

何となく読むと「Googleすげー」的な本にも見えるのですが、、似たようなことをやっている人間からすると、こいつはクラウドインフラに関わる当事者が読むべき入門書だと感じるわけです。Googleがやっていることをまねするためではありません、このような巨大インフラを構成にするに当たり必要な要素が上から下まで網羅されているというのがポイントなのです。

インフラのコストを下げるためには

クラウドインフラを作ると言うことには、暗黙のうちにコストを削減するという圧力がある、ということにします。まあ、お金をいくらかけてもよければこんなにめんどくさいことやらなくていいですからね。
コストを下げるというのは、従来はサーバを安く入手したり、単体のサーバでより多くの処理をこなせるようにしたりという努力があったわけです。もちろんデータセンター(コンピュータの置き場所)を安く作るというのも重要なことです。
しかし、最近のコスト低減圧力はそんなレベルをとうに通り越して、それぞれのレイヤーでの努力だけではどうにもならないレベルにまで到達しています。

システムの品質というのを定義するのは難しいのですが、まあ皆さん何となく性能とか可用性とかを思い浮かべると思うので、そういうなのをひっくるめて「品質」と言うことにしておきましょう。「品質」は高ければ高いほどいいのですが、たいていの場合質を高めるとコストが高くつきます。そして、コストと見合いながら「このへんまでならいいかな」という感覚で要求する品質とコストの最適化を測ってきました。
そして、従来はこれは各レイヤーにおいて個別に行われていたのです。

個別にコストと品質のバランスが最適化されたシステムからさらにコストを下げるにはどうするか。そこで考えるのが、レイヤーをまたいだ最適化です。
サーバのパーツを豪華にして停止しにくくするのではなく、周囲の仕組みをあるサーバが停止しても影響を受けにくくする。高価なロードバランサを使う代わりにアプリケーションを工夫してセッションを共有する、とか。
あるレイヤーでは実現できなかった「品質」を別のレイヤーの「品質」を向上させることで、システム全体としての「品質」を低下させない(向上させる)という手法がとられてきました。

データセンターもシステムのレイヤーの一つである

そして、Datacenter as a Computerの言わんとすることは、このレイヤーをまたいだ最適化をデータセンターのレイヤーにまで広げようと言うことです。
従来ソフトウェアとインフラ(サーバ・ストレージ・ネットワーク)については、比較的近しいエンジニアが手がけてきたため、レイヤーをまたいだ最適化が意識無意識のうちに行われてきました。しかし、データセンターに代表される、いわゆる「ファシリティ」レイヤーについては、求められるスキルが大きく異なることもあり、なかなかその最適化の対象になってこなかったという現実があります。
そのため、データセンターのエンジニアは自分のテリトリーの中で最高を求め、インフラエンジニアは高品質なデータセンターを「当たり前」として使ってきました。
コストの削減のために、この、両者の垣根を取り払おうというのが本書の提言することです。

日本語版「Googleクラウドの確信」の目次は以下のようになっています。
1. イントロダクション
2. 負荷とソフトウェア基盤
3. ハードウェアの構成要素
4. データセンターの基礎
5. エネルギーと電力の効率
6. コストのモデル化
7. 生涯と修理への対応
8. WSCの課題
それぞれの章で取り上げられている内容は概要でしかないかもしれませんが、これは「ファシリティエンジニアがインフラやソフトウェアのことを知る」そして「ソフトウェア・インフラエンジニアがファシリティのことを知る」ために必要な基本的な要素が押さえられています。
その目的は、自分のレイヤーが解決できない課題を他のレイヤーに任せること、あるいは他のレイヤーが解決できない課題を自分のレイヤーで解決すること。

特に4章、5章ではデータセンターがどのような技術により構築されており、何にコストがかかっているかを紹介しています。インフラエンジニアやソフトウェアエンジニアがこの章を読むことで、どのような要求を切り下げることでデータセンターのコストが引き下げられるのか、そして、そのために何を作らなければならないのかというアイデアを得ることができるでしょう。
そして、ソフトウェア・インフラエンジニアが、電力や冷却などのファシリティの特性を考慮したシステム作ることで初めて、ファシリティエンジニアは今までの固定観念から解放され、新しい(低コストな)ファシリティを作ることができるのです。

ぶっちゃけ、データセンターの現場は土建・設備業界です。*2もちろん中にはコンピュータやシステムに対して大変造詣の深い方もいらっしゃいますが、業界としてはオフィスビルを建てたりプラントを作ったりしている方々なのです。彼らは大変優れた技術をお持ちですので、「この条件を満たす建物を建てて」とお願いすれば間違いのないものを作ってくれます。しかし、彼らがITシステムを見て「この設備省略したいから、システムのここ何とかして欲しいんだけど」という要望を出してくれるかというと、残念ながらまだそれは難しいでしょう。現時点ではまだ、彼我の距離は近くありません。

だからこそ、クラウドインフラの構築というのは、異文化交流だと思うのです。
違う背景を持った技術者が互いの得意不得意を理解して、初めて効率的なインフラが作れるのです。
本書はそのきっかけとなる良い書籍です。これをとっかかりにして、文化の交流が進むことを切に願います。

*1 : 献本ありがとうございました

*2 : データセンター「オペレーター」さんはここでは含んでません

宣伝

えーと、本文とは関係ないのですが、技術評論社から出ている雑誌に記事を書かせていただきました。
こちらはIIJ GIOの紹介ってことになってます。今回のコンテナDCはGIOのために作っているので、まあ、関係ないわけではないかと。
GIOの仮想サーバって実際のところどうよ?って話もありますので、気になる方は是非どうぞ。
G-CLOUD Magazine
技術評論社

2010/04/26(月)ASCII.technologies 2010年06月号に記事を書きました

2ヶ月ぶりに書くblogがこれなんですが。

ASCII.technologies 2010年06月号に6ページ書かせてもらっています。
4/24発売なので、もう店頭に並んでます。

総力特集
雲の世界はここまできた
クラウドへの扉

低コスト化と「エコ」がカギ
クラウドファシリティのいま

例によってファシリティの話です...
特集自体はクラウドの話で、相変わらず一人旅な感じがするのですが、以前に記事を書かせて頂いたムック「雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術」の続きと言うことで今回もページを頂いてます。
あのときはどちらかというとコンテナDCの話に力が入っていましたが、今回は外気冷却技術の話です。つまりIIJでやっている次世代DC実験の話な訳で、今年に入ってからほとんどblogが更新できていない理由の一つでもあります(苦笑)

大変ぶっちゃけた書き方をすると、GoogleとかMicrosoftがチラーレス・外気冷却でよく話題に上ってるけど、実際のところ従来の方式とどう違うのかちゃんと紹介された記事が見当たらないので自分で書いてみようという事だったりします。そのせいでIT雑誌だというのに空調の話ばっかりになってますが。


これまた以前に記事を書かせてもらったASCII.technologies 2009年8月号のデータセンター特集から、さっき書いたムック「雲の世界の向こうをつかむ クラウドの技術」、そして今回の記事という流れで、いい感じに最近のデータセンターファシリティのトレンドが見えるんじゃないでしょうかと自画自賛。

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