検索条件
ニコニ考 - 給料より安い制作費への反論(その2)
その1はこちら
■ニコ動が1000万IDになっても商品は売れない
これも大きな誤解、あるいはわかっててやってるミスリード。
さよなら絶望先生、新作DVDが過去最高の注文数の件。 by 店長 (ニコニコ市場(β) ブログ)
いよいよニコニコにゆかり(?)のある、「絶望先生」のDVD「さよなら絶望先生 特装版1」が9/26に発売になるわけですが、昨日現在でDVD注文数、811個ということで記録を作りました。
たった300万IDでこれである。これがmixiなみの1000万になっただけで、もう元が取れるのではないか。
Dan氏はこのように述べているが、本当にニコ動が1000万IDになったら売り上げも比例して伸びるのだろうか?
ニコ動に参加している人自信が気づいているとは思うが、現在のニコ動のユーザ層はアニメ(おたく)関連の嗜好の人間が非常に多い。反対に、アニメDVDにお金を出して買うような層のかなりの部分がニコ動に参加しているということも考えられる。
もちろん「ニコ動のIDとったら負けかなと思ってる団」とかいう人々もいるわけで、全てがそうであるというつもりは無いが。
ここでニコ動が更なる量的拡大に成功したとして、新たに参加してくる700万のユーザはどんな嗜好を持っているだろうか。mixiでもなんでもそうだが、フォロワー層はアーリーアダプタ層に比べて圧倒的に「薄い」。アニメのDVDを買うような「濃い」層はすでにニコ動に参加しているのだ。これからやってくる人間に「800人/300万人」のような高い購買率を期待できるはずが無い。
つまりニコ動が大きくなっても、その規模の拡大ほどには商品の売れ行きは増えないのだ。
さらに別の考察を。
現在アニメDVDはさまざまなチャネルで販売されている。アニメイトのような専門店からamazonのようなネット通販まで。
当たり前のことだが、ニコ動での売り上げが増えたとしても、他のチャネルでの売り上げが減少すれば、結局アニメの制作委員会が手にする売り上げは変わらない。
先ほどの予測が外れ、ニコ動でのアニメDVDの売り上げが伸び続けたとしても、それは本当に「作品全体の売れ行きが伸びる」のだろうか?単に購買チャネルが移動したというだけではないのだろうか?
もうひとつDan氏の記事には数字のトリックがある。
考えても見て欲しい。絶望先生クラスであれば、現状ですら一話につき10万回は視聴される。
ここ、あくまで「10万回」であって、「10万人」ではないのだ。
ニコ動をちょと使ってみればわかるが、自分でコメントを書いたりしていると、一人で同じ動画を複数回再生することなんかは珍しくない。最初にざっくりと全編を見て、その後コメントをつけるところを探しながらもう一度見る、そんな行動が容易に想像できる。
仮に一人が平均2回再生していたとすると、それだけで「視聴者数」は半分になってしまう。当然一人が複数回試聴したとしても、課金は「一回」なので、それだけで収入半分だ。
ニコ動の中でもトップクラスの再生数を誇るらしい絶望先生でも、制作費の半分も回収できないのである。
ニコニ考 - 給料より安い制作費への反論
すげー長くなったので分割。もしかしたら途中でやる気なくなって続かないかも。
※追記: 続きは以下のところ
Dan氏が間違っている三つの箇所 - その2
■アニメ制作のビジネスモデルの違い
これは本筋ではないのだが、結構な誤解なので指摘しておきたい。
Dan氏はたけくま氏が発見した資料を持って現在の深夜アニメの状況を語ろうとしている。しかし、これは大きな誤解があると思われる。
確かに経産省の資料は公式文書だが、これはあくまで「例」でしかない。
特に深夜アニメはこの資料と大きく異なる形態で制作されていることが多い。
たとえば、最近の深夜アニメは大抵「○○制作委員会」という団体がクレジットされているが、経産省の資料にはそれに該当するものが見当たらない。このあたりで違和感を感じてもらえると思う。
これは、アニメの制作のビジネスモデルが「ハウス食品名作劇場」のような「企業広告型」、それから最近の深夜アニメに代表される「単独回収型」で相当異なっているからだ。
まず、「企業広告型だが」、これは主に広告代理店・TV局が主導で制作されることが多い。
この場合の資金の流れが例の経産省の資料に書かれているものだろう。
これはアニメ業界と関係の無いスポンサー企業が自社のイメージ向上のために制作しているものである。スポンサー企業としては金銭的なリターンは求めていない。広告効果が得られればそれで良いのだ。
なので「版権ビジネス」はおまけでしかない。DVDの販売も同様。
一方現在の深夜アニメの主流である「単独回収型」は、アニメ制作それ自身で回収を目論んでおり、「版権ビジネス」が主たるものになっている。
この「単独回収型」の場合どのような流れになるのかを図にしてみた。
ここではわかりやすくするために各々の「立場」をばらばらにして書いているが、実際にはひとつの会社が複数の立場を兼任している。たとえばある会社が制作委員会に出資しながらDVDの販売をしたりするのも当たり前だし、有力なアニメスタジオが制作委員会に出資していたりするのも良く見かける。
このモデルの特徴は、資金がスポンサーから一方的に流れ込んでくるのではなく、関連する各社が金銭的リターンを求めながら資金を「投資」していることにある。
では金銭的リターンを得るためにはどのような手段が取れるか。当然現金収入が必要なので、DVDなり関連グッズなりを販売する「版権ビジネス」が主要な目的になってくる。
(DVDは最も単価の高い「グッズ」であるので、自然ビジネスの中心となる)
このように、経産省の資料に書かれたモデルと、深夜アニメのモデルはまったく異なる。
※この手の話は「小麦ちゃんマジカルて」のDVD特典で紹介されていたはず。
続くかもしれないし、続かないかも。