2008/04/15(火)おおきくなりません/やっぱりおおきくなりません (白倉 由美/徳間デュアル文庫)

isbn:4199051740おおきくなりません (白倉 由美/徳間デュアル文庫)
isbn:9784199051777やっぱりおおきくなりません (白倉 由美/徳間デュアル文庫)

isbn:9784062113960おおきくなりません (白倉 由美/講談社)


書店で「白倉由美」という文字を見かけて思わず手に取った。*1
挿絵が鶴田謙二というのも見た瞬間に納得できる気がした。

白倉由美が漫画家だったというのは、知る人ぞ知る...ということになるのだろうか?昔古本屋で見つけた白倉 由美のコミックスをいくつか読んだ事があってとても印象に残っていた。

当時すでに秋田書店(少年チャンピオン)はなんだか変な方向にシフトしていたので、この作者の作品がチャンピオンに載っていたというのに妙な違和感と納得を感じたのだが。
ちなみに少年チャンピオンというと、今でこそメジャー4誌の中ではダントツにマイナーだけど、古くは手塚治虫も書いていた名門誌だった。なので、私が読んでいた「少年チャンピオン」に対しては「白倉由美」は違和感があったのだけど、連載当時の本誌を読むことが出来ればまた違った印象もあったかもしれない。

そんな下敷きを整理しつつ、本作品。
「自伝『的』小説」ということになるのかな。白倉由美の背景を知ってるのと知らないので印象はかなり違うと思う。

実のところ「おおきくなりません」はあまり面白くない。
設定こそ意外(といっても一部現実なのだが)だけど、それ以外はなんだか童話を読んでいるようで淡々としている。それはそれでハートウォーム系ではあるけど、その時点ではそこまでだった。
半年して「やっぱりおおきくなりません」を読んで、ちょっと面白くなった。

「おおきくなる」とは、この作品の中でもひとつの例でしか触れられていないわけだけど。35歳の少女と42歳の少年(amazonの書評の表現を借りた)の二人が「おおきくなる」ことを求めている様は、この歳になったわが身を振り返りつつ感じるところがある。

これ、いくら少女と少年だからといってを中学生なり高校生なりをモデルにして書いちゃうとだめなんだ。この歳になってもライトノベルに現を抜かしているわけだけど*2、たまにその主人公(それこそ中学生だったり高校生だったり)がうらやましいと感じたり追いつけなさを感じたりする。過去を見る目線で。
そんな作品と違って、真巳美と月哉を見ている目線は未来を向いていると思う。だからまぶしくない。

体裁としてはライトノベルで一応ジュブナイル世代向けってことになってるだろうけど、「おじさん」「おばさん」に片足突っ込んだ人間が読むと面白いんじゃないかと思った。


さて「やっぱりおおきくなりません」の最終章(第5章)だが。第4章の胸から下が融けていくような喪失感を一気に埋め戻してくれる。だけどしかし。
あとがきでも「元々第5章はなかった」と書いてあるとおり、これはやっぱり蛇足だろう。ハッピーエンドが大好きな私だけど、やっぱりここは蛇足だと思う。
ストーリーとしてみるなら第4章で終わるべきだったとおもう。
……そこを最後まで書ききることが「おおきくなる」ことだとすれば、なんだか悔しいかな。
おそらくジュブナイル世代に対しては第5章は必要なんだと思う。重ねて書くけど、私も第5章があることで安心できたし、気持ちよく読み終えられた。
でもここを書いちゃったからライトノベルなんだろうなぁ。ライトノベルとして出版するためにはここが必要なんだろうけど。
そういういみでは「おおきくなってる」のかもしれないですね。

*1 : ちなみに「おおきくなりません」は以前に講談社から出版されていたらしいが、未見だった

*2 : それ自体は恥ずかしいと思っているわけではない