2007/08/27(月)黄色い花の紅 (アサウラ/集英社スーパーダッシュ文庫)
バニラ―A sweet partnerを読んでこの作者が気になったので買ってきた。そのわりにしばらく積んであったけど。
ある登場人物のセリフ。
「やっぱね、銃は屈強な男が持つよりかわいい女の子が持つもんだよ。うん、絶対」大賛成。*1
しかもここで女の子が持つ銃が護身用っぽいやわい銃じゃいけない。かといってごつければいいって物でもない。
で、この作品での選択はこれ。FN_ブローニング・ハイパワー
この作品の後に書かれたバニラ―A sweet partnerでは架空の狙撃銃が取り上げられているけど、やっぱり現存する銃ってほうがフェチっぽくてよいよね。よいよい。
作品中銃の描写へのこだわりが感じられるなぁと思ったけど、あとがきによればこれでもだいぶ削除されたらしい。作者なんたるガンマニア。
で、作品のストーリーのほう。
お気に入りの作品なので語っちゃうよ?
前半の奈美恵視点から紅花視点に移り変わるところでちょっと引っかかった。後半の紅花の決意を書き出す上で前半の奈美恵の愛情の描写は必要なんだろうけど、ここが奈美恵視点というのがちょっとわかりにくかった。これ、書きにくいだろうけど紅花視点か第三者視点で話が進めば途中で感情移入の移入先の切り替えで戸惑うこと無かったかも。
あと、中盤の黒田と紅花のやり取りの中で、黒田が紅花に対して「戦うこと」を決意させるあたり。これは登場人物的には抽象的な意味で「戦う」なんだろうけど、読者バイアスで見ていると具象的な意味で「(銃を取って)戦う」へのネタ振りと思い込んでしまう。なので黒田が思いつきのように「銃、撃ってみるか?」と言い出すのが少しこっけいに見える。登場人物的に見えれば、まさか14歳の女の子に銃持たすなんてありえないよね、って話だから、作中の反応が正しい気もするのだけど。
一方、後半突入して紅花があっけなく戦闘に参加するあたりはいかにも小説という感じで、前のめりになった読者としてはこっちのほうが違和感が無い。
無垢な少女に銃を持たすだけじゃなくて、ちゃんとその背景も勉強させるっていう周りの大人たち(冒頭で引用したイカスセリフも)がいいねぇ。そして素直にそれを吸収していく紅花もよい。
その紅花。無力であることを自覚して、その後銃という力を手に入れたあたりで変に暴走するかなと心配していたのだけど、意外と冷静。激情家なところも見せながらもクールでよい。
紅花に肩入れしてる奈美恵視点でみてもちょっといまひとつな前半から、弾けるような行動力と執念を見せた後半。その変貌がとても魅力的です。
一方謎の社長の工藤晩翠はちょっと謎すぎ。物語のポジション的にも微妙。黒田だけでもよかったかな?
まあ、そんな感じで、単に紅花かわいいよ紅花とかいう低レベルな話以上のところで気に入りました。
大賞受賞作というのもうなずけます。
ところで。絶対この作者は女性だと思い込んでいたんですが、男性らしい...。ショックだ。