ぱらめでぃうす

"don" also known as "doumae" and "donz80"

アマチュア無線 電子工作

「fakeFC」YAESU無線機のTUNEボタンでICOMアンテナチューナーを制御する

YAESU製の外部チューナー対応アマチュア無線機(例えばFT-991A)にある「TUNE」ボタンから、ICOM製のアンテナチューナー(例えばAH-4)を制御するアダプターを開発しました。
このアダプターはYEASU製のアンテナチューナー(例えばFC-40)のふりをするので、FC-40に対応した無線機で利用できます。また、AH-730など制御装置方法が同じ他のアンテナチューナーでも利用できます。

FT-991AとfakeFC
FT-991AとfakeFC

YAESUの無線機にICOMのチューナーを接続する

YAESUやICOMのHF対応アマチュア無線機には、それぞれ純正の外部オートアンテナチューナーがオプションとしてラインナップされています。これらは、同一メーカーの対応無線機から制御することが前提で、チューナー自体には操作ボタンなどは用意されておらず、無線機側にチューナーを制御する(チューニングを開始する)ための「TUNE」ボタンが用意されています。

メーカー純正アンテナチューナー
メーカー純正アンテナチューナー

しかし、チューナーの制御方式はYAESUとICOMで異なります。このため、YAESUの無線機からICOMのチューナーを制御することも、その逆もできません。

ところで、ICOMのチューナー(AH-4やAH-730)は、非公式ながら制御方式が知られており、比較的簡単な操作でチューニングを開始することが可能です。次のような制御回路を接続することで、YAESUの無線機にICOMのチューナーを接続して運用することもできます。

自作コントローラーでICOMチューナーを制御
自作コントローラーでICOMチューナーを制御

制作例

ただし、これらの回路はあくまでチューナーに対してチューニング開始信号を送るだけで、実際のチューニングを行う際には次のような手順を踏む必要がありました。

自作コントローラーを使う場合のチューニング操作
自作コントローラーを使う場合のチューニング操作

この手順を自動化して、制御回路が無線機とチューナーを操作することで、上記の手順を自動化する試みもあります。

制作例

これでも実用上の問題は解決するのですが、せっかく無線機にある「TUNE」ボタンが利用できません。

YAESUのチューナーのふりをする、fakeFC

そこで、次のような動作をする装置を開発しました。

  • YAESUの無線機に対して、YAESUのチューナーのように振る舞う
  • YAESUの無線機の「TUNE」ボタンの操作を受け、ICOMのチューナーにチューニング起動の信号を送る

YAESUのチューナー(FC-40)のふりをする装置なので、「fakeFC」と名付けました。

fakeFCの接続位置
fakeFCの接続位置

これにより、YAESUの無線機の「TUNE」ボタンの操作で、ICOMのチューナーを制御することができます。

fakeFCを使った場合のチューニング操作
fakeFCを使った場合のチューニング操作

YAESU FC-40のふりをするつもりで開発しているので、YAESUのFC-40対応無線機であれば利用できると思われます。開発時はFT-991Aを使いました。

(実は、プロトコルの解析にはFC-30を使っています。FC-30、FC-40、FC-50は同一プロトコルで制御できるようです。詳しくは別記事にて)

制御対象のICOMのチューナーは、AH-4です。おなじプロトコルのようなので、AH-730も利用できると思われます。AH-705は少し修正が必要そうです。

対応無線機(YAESU) 対応アンテナチューナー(ICOM)
FC-40対応無線機 AH-4互換チューナー
FT-991・FT-991A
FT-710
FTX-1 (SPA-1M接続時)
など
AH-4
AH-730

なお、FC-40のふりをするのはチューニングの起動だけで、アンテナチューナーとしての性能が変わるわけではありません。特に、FC-40は、これまでのチューニング状態をメモリに記憶しておき、無線機の設定周波数に応じてメモリから呼び出す機能があり、これが受信中にも動作するようなのですが、fakeFCでは再現できません。

(せめてチューニング無効の通知が返せないか、調査中です)

fakeFCの動作

fakeFCは無線機本体の「TUNE」ボタンから操作します。fakeFCの動作状況はOLEDに表示します。(赤色LEDやプッシュSWはデバッグ用です)

fakeFCのOLED表示
fakeFCのOLED表示
起動直後(1)
ロゴが表示されています。
チューニング(2)
無線機のTUNEボタンを押すとチューニングを開始します。fakeFCのリレーが動作します。
チューニング完了(3)
チューニングが終了すると「Tuned」表示になります。チューニング時の周波数を画面下に表示します。
チューニング失敗(4)
チューニングに失敗した場合「Failed」と表示します。この場合も、無線機本体にはチューニング完了のインジケーターが点灯します。チューニングに失敗した場合SWRは十分に下がっていませんので注意してください。
チューナー無効(5)
無線機からチューナー無効のコマンドが送信されました。fakeFCはチューナーにリセット信号を送ります。FT-991Aの場合、無線機が起動して十数秒後にチューナー無効コマンドが送信される場合があるようです。
エラー
チューナーの応答がない場合「AH Error」と表示されます。

注意

fakeFCはチューナーからチューニングの失敗の応答を受け取りますが、無線機に対してチューニング失敗を通知できません。無線機のインジケーター上チューニングに成功したように見えるので、fakeFCの画面で確認してください。無線機にチューニング失敗を返す方法を調査中です。

チューニング後、無線機で送受信周波数を変更した際に、無線機は周波数の変更をfakeFCに通知しますが、fakeFCは再チューニングを行いません。無線機のインジケーター上チューニングが成功しているように見えますが、SWRが高くなっている可能性があります。再度「TUNE」ボタンを押して明示的にチューニングしてください。fakeFCに最後にチューニングを行ったときの周波数が表示を表示しているので参考にしてください。

fakeFCの構造

※YAESU無線機とFC-40の間のプロトコルは別記事で紹介する予定です。

fakeFC (プロトタイプ基板)
fakeFC (プロトタイプ基板)

主なロジックはArduinoで実装しています。今回はArduino Pro Micro (Sparkfun Pro Micro)の5V版を使っていますが、そんな特殊なことはしていないので他のArduinoでも大丈夫でしょう。

回路図とコードは次の通りです。回路の設計も回路図を書くのも素人のため、おかしなところがあると思います。

fakeFC (プロトタイプ回路図)
fakeFC (プロトタイプ回路図)

fakeFCはFC-40のふりをするので、YAESU無線機のTUN (TUN/LIN) 端子に接続します。
また、AH-4を制御するために、4端子のコントロールケーブルも接続します。

YAESU無線機のTUN端子は外部チューナーに供給するために13.8Vが出力されています。ここからAH-4の動作電源を供給することもできると思われますが、今回はAH-4は別電源としました。また、AH-4との間は、フォトカプラとリレーで絶縁しています。

LEDとプッシュSWが取り付けられていますが、動作確認用です。なくても動作に支障はありません。

諸々

とりあえずチューナーが起動できるようになったので、一安心です。そもそもFT-991Aを使っているのにAH-4を買ったあたりで無謀な感じではあったのですが、なんとか形になりました。

今後の使い回しを考えて、当初制御方法が不明だったFC-40より制御方法がわかっているAH-4の方がいいのではと思って購入したのですが。結局FC-40の制御方法も解析することになってしまいました。結果的に副産物としてFC-40の外付けコントローラーも作れそうです。

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