ぱらめでぃうす

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電子工作

RDA5807FP DSP Radio (DIY-1 2025.3.24) の分析

ちょっと電子工作がしたくなって、Aliexpressでラジオの組み立てキットを購入しました。

「中華200円ラジオ」とも呼ばれる”Hex3653″ラジオICを使った組み立てキットが定番で、blogやYouTubeでも多数のレポートが出ています。(最近300円ぐらいするけど)

Hex3653も面白そうですが、チューニングがボタン式の割に周波数表示がなく、いまどの周波数を受信しているのかわからないのが残念です。外部のマイコンからI2CでHex3653を制御すれば周波数表示ができるのですが、このキットではマイコンなしのモードで動かしているためです。

DIY-1という名前の組み立てラジオキット

そこで、類似のキットの中で周波数表示機能があるものを購入することにしました。今回はAliexpressで「中波ステレオデジタルチューニングマシン,87-108mhz,FM 2バンド,ヘッドフォン,ラジオモジュールキット,AM, FM」として販売されていた、500円強のキットです。周波数が海外向けで、日本のFM放送(76.0MHz~99.0MHz)とは合わないのですが、ラジオを作ることが目的であって聞くことが目的ではないので、あまり気にしません。

ところが、実際に届いてみたキットを開封すると、Aliexpressで販売されていたものと微妙に異なります。

次の写真が、Aliexpressで私が購入したはずのDIY-1の完成写真です。(以降Alex版とします)

AliexpressのDIY-1商品画像
AliexpressのDIY-1商品画像

そして、こちらが私が購入したDIY-1の組み立て前の基盤です。(基板裏面に”2025.3.24″というシルクがあったので、以降2025.3.24版とします)

購入したDIY-1 2025.3.24の基板
購入したDIY-1 2025.3.24の基板

全然違うがな

まず、電源用と思われるUSB Type-Cコネクタがありません。また、基板上の部品の配置も異なります。謎の指先をかたどったシルクスクリーン印刷は同じですが。

Aliexpressの販売ページは他のモデル(後述)の説明写真もまとめて記載されているので、どれがどの説明かわかりにくいのですが、注意深く見ると私が購入した2025.3.24版に相当する写真は一つもないことがわかります。

念のためAliexpressの他のsellerのページやWebを検索してみましたが、2025.3.24版に該当すると思われる情報は見つけられませんでした。このレベルの製品でこんなこと気にした方が負けですし、そもそも組み立てて遊ぶために買ったものなのでいいんですけど。しかし、Aliex版と2025.3.24版のどっちが新しい設計なんでしょうね……USB Type-Cの電源端子がある方が豪華な気がするので、こっちの方が後でしょうか?しかし、2025.3.24版の情報が全然出てないので、こっちが新しい気もします。

ちなみに、このDIY-*という名前のラジオキットにはいくつもバリエーションがあります。Aliexpressでは一つの販売ページ内で別モデルを併売していることがあるので注意が必要です。

DIY-1
FM(VHF帯)のみ。7seg4桁の周波数表示あり。マイコン搭載。RDA5807FP使用。
DIY-2 (DIP)
FM(VHF帯)のみ。7seg4桁の周波数表示あり。マイコン搭載。RDA5807MP使用。※どこがDIPなのか不明
DIY-3B
2band、FM(VHF帯)・AM(MF帯)。アナログボリュームでチューニング。チューニングインジケーターあり。KT0936M使用。
DIY-4
4band、FM(VHF帯)・AM(MF帯・SW帯1・SW帯2)。アナログボリュームでチューニング。チューニングインジケーターあり。KT0936M使用。

しかも、それぞれ微妙にリビジョン違いもあるようなので、非常に混沌としています。

DIY-1 2025.3.24版の分析

分析と言うほどのこともしていませんが。組み立てる前に部品をチェックして回路図を起こしてみました。

キットに含まれている部品は次の通りです。非常にシンプルです。説明書などは一切なく、基板のシルク印刷から部品を選ばなければなりません。まあ、シルクにはちゃんと書いてありますし、向きを間違えそうなところにも(中国語で)注意書きが入っているのでなんとかなるでしょう。

DIY-1 2025.3.24 キット
DIY-1 2025.3.24 キット

パーツリスト

部品番号 型番/規格 説明
IC1 MCU マイコン (詳細不明)
IC2 RDA5807FP DSPラジオIC
LED (シルクなし) 2481BS-2 4桁 7seg LED (Anode-Common)
C1 104 (0.1uF)
C2 104 (0.1uF)
CD1 100uF
CD2 100uF
L1 10uH アキシャルリードタイプ
L2 10uH アキシャルリードタイプ
L3 10uH アキシャルリードタイプ
R1 4.7KΩ
R3 15Ω
Y1 32.768KHz
J4 3.5mm 4極ヘッドフォンジャック
K1 タクトスイッチ
K2 タクトスイッチ
K3 タクトスイッチ
K4 タクトスイッチ
K5 タクトスイッチ

部品番号/規格はシルクから拾っています。部品番号が飛んでいるのは気にしてはいけないのだと思います。

この中でくせ者がIC1です。私が購入したキットでは刻印のないICが入っていました。しかも、IC1もIC2もSOP16(16ピン)なので戸惑います。

IC1(左、無刻印)と、IC2(右、RDA5807FP)
IC1(左、無刻印)と、IC2(右、RDA5807FP)

シルクにも「主控MCU」(Micro Controle Unit)としか書かれておらず詳細不明です。回路を見るとAC1082と呼ばれるラジオ制御用のICに似ているのですが、微妙にピンアサインが違うのでAC1082そのものではなさそうです。

ちなみに、AC1082はaitendoで扱っているラジオキットで使われていますが、データシートもない謎のICです。

RDA5807FPはこれ一つにラジオに必要な部品がほぼ入っているという驚異的なICです。電子ボリュームまで入っている模様。ただ、選局などは外部からI2Cで行う必要があります。そこで使われているのがIC1のMCUです。



RDA5807FP datasheet
RDA5807FP datasheet

基板と回路図

基板を眺めながら回路図を起こしてみました。片面基板ですし、ほぼスイッチとLEDへの配線なので、素人の私でもなんとか手に負えます。

DIY-1 2025.3.24 基板裏面
DIY-1 2025.3.24 基板裏面

DIY-1 2025.3.24 回路図
DIY-1 2025.3.24 回路図

MCUはIOを節約するために、LEDへの給電とスイッチのスキャンを同じpinでやっているようですね。LEDへの電流制限抵抗もMCUに内蔵しているんですかね……。あと基板裏面から見て右側に、4本ほどTestPointらしきものが引き出されています。VCCとGNDはいいとして、後2本はなんでしょう。SDAとSCLならともかく、SDAだけではI2Cの取り出しとも思えません。GPIOとの共用端子でMCUへのプログラミングをするための端子なのかと思いましたが。

先ほど謎と書いたMCUは、もしかしてらPICやAVRのような汎用のMCUにプログラムを書き込んだものかもしれないと思ったのですが。この位置にVCCとGNDが来ているMCUが見当たらないんですよね。そもそも有名MCUでSOP-16のパッケージを用意しているものが少なく。WCH(CH32V003系)だとSOP-16のパッケージがあるんですけど、電源の配置が違いますし。完全にカスタムのMCUなのでしょうか?

組み立て

組み立てにおいて何か特別な注意があるわけではありません。前述の通り組み立ての手順などは書いてありませんので、基板のシルク印刷を見ながら部品を拾っていく必要があります。

ハンダ付けは大体背の低い部品から行うのがセオリーかと思います。このキットの場合表面実装(SOP16)のIC1, IC2から手をつけることになるので、初手からクライマックスです。みなさんそれぞれやり方があると思いますが、この程度の大きさの部品であればテープで仮固定しながらハンダ付けすることもできます。そこさえ乗り切れば部品数も少ないので1時間ぐらいで完成するでしょう。

DIY-1 2025.3.24 組み立て
DIY-1 2025.3.24 組み立て

試聴・操作方法

このキットではイヤホンケーブルがアンテナ線となっているので、イヤホンをつないで電池を入れます。電源ボタン(POWER)を押すと電源が入って7seg LEDが点灯します。

私の家では、90.5MHz(TBSラジオFM補完放送)、91.6MHz(文化放送FM補完放送)、93.0MHz(ニッポン放送FM補完放送)を聞くことができました。やはり87MHz-108MHzってことで実質ワイドFM専用機ですね。RDA5807FPは50MHzから108MHzまで対応しているので、MCUのプログラムの制限です。残念

でもまあ、自分で組み立てたラジオから音が聞こえてくるのはいいものです。

DIY-1 2025.3.24 試聴
DIY-1 2025.3.24 試聴
電源ON/OFF
POWERを単押しでON/OFF
画面表示
7seg LEDに受信中の周波数表示
選局(手動)
PR-/PR+を単押しすると0.1MHzごとに周波数が変化。長押しするとキャリアを拾うまでスキャン
チャンネル登録
POWERを長押しすると、87MHz-108MHzまでをスキャンしてチャンネル登録。
選局(チャンネル)
V-/V+を単押しすると登録済みチャンネルを選択。LED表示はP00~表示。
音量変更
V-/V+を長押しすると音量変化。LED表示はL00(ミュート)、L01~表示。

RDA5807FPにはMCUを必要としないモードもあるそうで、こっちだと50MHzからスキャンしてくれるみたいです。ただ、どの周波数を受信しているかは不明です。Hex3653と違ってチューニングインジケーターもつけられないようですね。(このモード、データシートに載ってないような)

この辺のキットだと、周波数を表示しつつ87MHzから受信できるみたいです。