アマチュア無線はケーブルが命
アマチュア無線では太いケーブルを使うことが重要と言われます。アンテナ線が細い=電波の減衰が大きいと、送信においてはこちらの電波が届きにくく、受信においては弱い電波を聞き取りにくくなります。送信側は無線機の出力を上げて無理矢理電波を届けることができますが、あまり上品なやり方ではないようです。一方、受信側が有効な手立てがあまりありません。弱い電波を受信するためには、アンテナを大きくしてできるだけ大きな電力で電波を受け、それを太いケーブルで減衰させないまま無線機に届けるしかないのです。(受信用のアンプを入れるという方法もあるけど、ノイズまで増幅されるし…)
とはいえ、太いケーブルは取り回しが悪く、さらにケーブルが高価というハードルがあります。取り回しはともかく、ケーブルの価格はなんとかしたいところです。そこでAliexpressで中国から輸入することを考えるのですが、日本でよく使われる8D-FBや10D-FBなどのケーブルはAliexpressでは見かけません。8Dや10Dの規格はJIS C 3501(JIS検索から検索可能)なので、中国では使われていないのかもしれません。(でも、5D-FB(JIS)やRG58・RG316(MIL規格)はAliexpressでも見かけます)
Aliexpressで太いケーブルを探してみると、LMR240やLMR400といったケーブルが見つかります。これはAmphenol社の規格なのでしょうか。このケーブルをアマチュア無線で利用するとどの程度の減衰になるかを、比較してみたいと思います。
基本スペック
規格 | ケーブル外径 | 資料 |
---|---|---|
5D-FB | 7.6mm | JARL |
8D-FB | 11.0mm | JARL |
10D-FB | 13.0mm | JARL |
RG-58/U | 5.0mm | オヤイデ電気 |
RG-316/U | 2.5mm | オヤイデ電気 |
LMR-240 | 6.1mm | Times Microwave Systems |
LMR-400 | 10.29mm | Times Microwave Systems |
周波数-減衰特性
上記資料から数字を引っ張ってきてExcelでプロットしてみました。
一部グラフが重なっていて見にくいですが、LMR-240は5D-FBよりも減衰が大きく、(プロットしていないですが)3D-FBよりは少ないぐらい。LMR-400は概ね8D-FBと同じぐらいと言うことが分かります。
AliexpressでLMR-400のケーブルが10m 3,000円(送料無料)ぐらい。ロケットアマチュア無線で8D-FB-LITEを10m買うと4,400円(税込み)ということで、確かに安いけどわざわざAliexpressから買うか?……という程度の価格差でした。
430MHz帯・50MHz帯における減衰
折角なので、430MHz帯・50MHz帯それぞれでケーブルを引っ張ったときどのぐらい減衰するのかを計算してみました。グラフはケーブル長が0mの時を基準に、どのぐらいの電力が伝えられるかを%で示しています。(グラフが60%なら、60%のパワーで送受信できている。減衰分は40%ということ)
430MHz帯
実は、色々都合があって5D-FBで25mもケーブルを延長してしまったのですが、これはないわーという感じです。数字は47%、つまり半分以上の電力がケーブルでの損失となっています。とはいえ、10D-FBにしても66%にしかなりませんので、そもそもUHF帯では長距離アンテナ線を引いてはいけないということがよくわかります。
50MHz帯
一方、50MHz帯になると5D-FBで25m引っ張っても78%ほどになります。逆に10D-FBにしても88%とそこまで改善はしませんので、50MHzやさらに減衰の少ないHFだとわざわざ10Dのケーブルを使うまでもなさそうという感じです。
自宅のアンテナは5D-FBを25m引っ張っていると書きましたが、その前はRG-316/U 5mのケーブルの先にアンテナをつけていました。ただ、こちらは場所が悪く家の谷間になっています。直接波メインの430MHz帯ではこれは良くないだろうと思ってアンテナの場所を変えた結果、ケーブルが25mになってしまったのでした。一応交信自体はできているのですが……やっぱり10D-FBに変えるかなぁ。いまの5D-FBのケーブルは将来HFに出るときに使えばいいかとも考えますが、それならRG-316/U 5mの先にHFのアンテナをつけても減衰自体はあまり変わらないかも。