アマチュア無線機とGPS
最近のアマチュア無線機には、無線交信時に位置情報を交換できる機能があります。特に移動運用のためのハンディ機やモービル機には本体にGPSを搭載して自分の現在位置をGPS衛星から取得できるようになっています。
FTM-400XDは車に搭載して利用することを考慮したモービル機1で、本体とコントローラーが分離されており、これを車のダッシュボードなどに置くことが想定されています。ということで、コントローラーの天井部分にGPS受信機が着いているわけですが、車載で使うならともかく、私のように自宅の部屋の中で交信していると、これでは衛星の電波を拾えません。
一応メーカーもそういうことを想定しているのか、FTM-400XDには外部GPS端子(EXT GPS)が用意されています…が、ここにつなげるオプションのGPSユニットは発売されていません。自分でなんとかするのがアマチュア無線の精神と言うことでしょう。ですが、自分で用意するかと言っても説明書には非常にざっくりとした情報しか掲載されておらず、ちょっと困ってしまいます。
そこで先達の知恵を求めると、何人かFTM-400XDシリーズに外部GPSを接続している方がいらっしゃいました。それによると、「NMEAフォーマットの信号を受け付ける」「RS-232Cレベルで入力する」「通信速度は4800bps」ということだそうです。
- 「FTM-400XDH外部GPS-ANTの接続 その1」oztechのブログ | oztechのページ – みんカラ
- FTM-400D用外部GPSアンテナを製作 – JR6PUE HOME PAGE
- GPSのNMEAフォーマット (参考)
ちなみに、FTM-400Dシリーズは全部で4機種あって、無線の出力と対応衛星が違います。20Wと50Wの違いは無線の免許に合わせたものです。(50W機を使うためには3級の免許が必要になるため)D/DHに対してXD/XDHは後から発売された改良機で、対応衛星が増えていますがそれ以外の点は全く同じです。と言うことで、対応衛星にさえ気をつければシリーズの他のモデルでも同じ話が通用します。(私が使っているのはFTM-400XDHです)
- FTM-400D(20W) / FTM-400DH(50W) … GPS対応
- FTM-400XD(20W) / FTM-400XDH(50W) … GPS・みちびき対応
GPSモジュールの入手
参考にした記事の方は秋月で販売されているGPSモジュールをお使いのようですが、ケースに入っていないのが残念です。ということで、aliexpressからケース入りのモジュールを輸入してみました。今回購入したのは以下のBN-82DUというユニットです。
例によって日本語があやしいのですが…。2しっかりケースに入っていて、1,300円弱というのは十分にお買い得だと思われます。似たような製品のバリエーションがいくつかありますが、RS-232Cレベルで出力されているものを選びましょう。また、電源が別になっている(このモデルは電源専用にUSBコネクタが着いている)のもポイントです。類似モデルでD-Sub 9Pinに電源まで一緒に配線しているモデルもあるのですが、これ、RS-232Cのピンアサインに電源を無理矢理割り込ませているので、PCのシリアルポート(USBシリアル変換)に繋ぐときに電源が取れずに困ってしまいます。最終的にコネクタぶった切ってFTM-400XD用のコネクタをつければいいのですが、後述の通りPCに繋いで設定変更が必要になるので、そのときのことを考えておいた方がいいでしょう。
BEITIAN Storeが気を利かせて詳細なスペックを書いてくれているので助かります。このユニットはチップセットにu-bloxのUBX-M8030-KTを搭載しています。対応衛星が結構幅広く、以下のGNSS衛星の信号を受信することができます。(GNSS…Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム、GPS的なシステムの一般名称)
- GPS (Global Positioning System… 米国
- QZSS (準天頂衛星システム・みちびき)… 日本
- BeiDou (北斗衛星導航系統… 中国
- Galileo (Galileo)… EU
- GLONASS (Global Navigation Satellite Systema)… ロシア
- SBAS (衛星航法補強システム)
実際、日本(東京都内)で受信してみると、GLONASSとSBAS(MSAS)の信号を受信していました。それはそれで興味深いのですが、FTM-400XDで利用するときは、これが問題になります。
上記の先達のWebには「QZSS(みちびき)非対応のFTM-400DにQZSS対応のモジュールをつなげるとFTM-400Dが誤動作する」と書かれていますが、FTM-400XDにGLONASSやSBASのデータを流した場合もだめなようです。GPS接続後、一瞬GPS信号を掴んだような表示があるのですが、数秒で表示が消え、GPS機能が停止してしまいます。知らない衛星のことは無視してくれればいいのですが、そういうわけにもいかないようですね。
ということで、DN-82DU(M8030-KT)をFTM-400シリーズで使うときは、事前に設定を変更して不要な衛星のデータを送ってこないようにする必要があります。(そもそも通信速度も変更しないといけないんですが)
DN-82DU(UBX-M8030-KT)の設定変更
u-bloxのページにあるu-centerというアプリを使います。
PCのシリアルポートやUSB-SerialにGPSユニットを接続してu-centerを起動すると、画面に受信しているGPS衛星の一覧などが表示されます。設定変更はView→Configuration Viewを開きます。
Confguration Viewにはいろいろな設定項目があるんですが、私も全部はわかってません……とりあえず変更の必要があるのは、PRT(Ports)と、GNSS(GNSS Config)の2箇所です。
PRT(Ports)はGPSモジュールのシリアルポートの設定です。出荷時には9600bpsになっていますが、FTM-400XDで使う場合は4800bpsに変更しておきましょう。
Configration Viewでは、画面左側のカテゴリを選んだ瞬間はu-centerデフォルトの値が表示されます。カテゴリを選んでしばらく待つか、ウィンドウ下にある「Poll」をクリックして数秒待つと、モジュールに設定されている値が取得され、u-centerの表示もそれに合わせて変わります。
ウィンドウ右側で値を変更したあとは、ウィンドウ下にある「Send」をクリックすると数秒後に変更がGPSモジュールに送信されます。なお
受信する衛星の選択はGNSS(GNSS Config)のカテゴリです。対応している衛星システムの一覧が表示されているので、必要なものだけenableにしましょう。FTM-400XDH(FTM-400XD)なら、GPSとQZSSのみ、FTM-400D(FTM-400DH)ならGPSのみをenableにしておけばいいと思われます。
ここで設定変更するとGPSモジュールの動作が変化するのですが、この状態ではGPSモジュールの電源を切ると設定が元に戻ってしまいます。設定をモジュール内の不揮発メモリに書き込むには、CFG (Configration)カテゴリを開いて、「Send」をクリックします。
接続ケーブルの製作
GPSモジュールとFTM-400XDを接続するケーブルを作るのは簡単です。モジュールから出ているケーブルをぶった切ってもいいのですが、再利用のことも考えて今回はD-SUB 9Pinのコネクタで接続することにします。
FTM-400XDのEXT GPS端子がコントローラー横にあるので、きれいに納めるためにL型のコネクタ月ケーブルを探してきました……3.5mmステレオミニプラグのならいっぱいあるんですが、2.5mmステレオミニミニプラグのってあんまりないんですよ。折角なので部品へのリンク載せておきます。
- 2.5mm ステレオプラグ付きケーブル L型 1.8m 23L-018|電子部品・半導体通販のマルツ
- D-SUBコネクター 9Pオス 3220DB9SPWGTE|電子部品・半導体通販のマルツ
- D-SUBコネクターカバー 9P/3列15P用 インチネジ 32209CTE|電子部品・半導体通販のマルツ
マルツのケーブルは赤・白・シールドで配線されているので、次の表のように結線します。GPSとFTM-400XDでTX/RXを互い違いに繋ぐところに注意してください。
GPS | D-Sub 9pn | – | 2.5mmミニプラグ | FTM-400XD |
---|---|---|---|---|
TX | 2Pin | 赤 | RXD | |
RX | 3Pin | 白 | TXD | |
GND | 5Pin | シールド | GND |
利用
製作したケーブルを使ってGPSをFTM-400XDに接続すると冒頭の写真のようにGPSの受信が可能になります。初回の受信や、GPS起動に暫く間が開いた場合受信に時間がかかりますので暫く待ってください。また、たまにGPSを受信しているのにFTM-400XDが反応しないことがありますが、どうもシリアルの同期が取れないことがあるようです。その場合は一度GPSを再起動すれば良い感じです。
GPSモジュールの電源が3.6V~5.5Vなので無線機の電源と共用できないのが悩ましいのですが。私は無線機の電源に5Vへの降圧回路を追加して、そこに繋いでいます。