ぱらめでぃうす

"don" also known as "doumae" and "donz80"

PC

安鯖は国内シェアNo.1の夢を見るか

LINEで送る
Pocket

もう何年前からか忘れたが、1万円程度の安鯖(安いx86サーバ)が人気である。

サーバと言っても本当に「サーバ」用途として使われている例はあまり多くなく、安価な家庭用のPCの代わりに使われている例が多いだろう。場合によってはケースなんかの部品取りにも使われているようで、必要なものをはぎ取られ、ばら売りにされたパーツがヤフオクに流れている様はもの悲しくもある。

細かい話は省くが、元々サーバ機についていたPCIExpress x16スロットが高速なグラフィックボードを刺すのに便利だったから……というあたりからこの種のサーバの家庭用PCへの転用が始まったと記憶している。そういうところに需要がある、とメーカーが気づいてからは、その手の「用途外」利用がやりやすいように工夫されたサーバがいくつも出荷されるようになったのだが、そういう売り方に最も手をかけているのはNECだろう。同社の安鯖専用ラインには、家庭用/オフィス用のケースを転用した、前面パネルにヘッドホン・マイク端子がついたミニタワータイプのサーバなんてものまである。

まあ、やたらに作りのしっかりした、きわめて無難なPCが格安で手に入るというので、わかってる人間には大変ありがたい話ではある。実際私のPCもNECの安鯖にWindows7を入れて使っている。

で、この手の安鯖、なんだかんだの割引コミで1万円~1.5万円ぐらいで入手できるのだが、どうも「原価割れてるんじゃないか」という疑念がぬぐえない。本当に原価割れているのかは、私には知るすべはないのだが、そこまで行かなくても、どう考えても儲かる商品ではない。なのに何度もモデルチェンジを繰り返しながら、継続的に出荷されているのはなぜだろうか?

安鯖に関するtipsを収集しているwiki@nothingの記事1を見てみると、NEC安鯖の主な販路の一つであるNTT-X Storeの総販売台数がまとめられていた。

これによると、NEC Express5800/S70 タイプRBというモデルは2010年11月12日~2011年06月30日の約半年間に8409台販売されたことになっている。これはあくまでNTT-X Storeでの販売数であり、その他の販路は含まれていない。また、NECでは他のモデルの安鯖も併売していることに注意。安鯖はスポット的に放出されるもので、安定的に出荷されていない2ということを踏まえつつも、半年で1モデルが8000台以上販売されていると言うことは、他販路他モデルを合わせると年間2万台程度の出荷があったとしても不思議ではない。

そこで、国内のx86サーバの市場のシェア争いに目を転じてみる。

2011年度上半期サーバ出荷台数シェア(マイナビニュースより引用)
2011年度上半期サーバ出荷台数シェア(マイナビニュースより引用)
マイナビニュースの記事(MM総研調査)に書かれているが、台数ベースで首位・NECと2位・日本HPのシェアの差はわずか1.1ポイント(%)である。(2011年度上半期)そして、半期の国内出荷数は26万台となっている。昨年度年間出荷台数(MM総研調査)も52万台だと言っているので、今年もその程度の出荷台数になると考えても差し支えないだろう。

仮に年間出荷台数を52万台とすると、先ほど推定した年間安鯖販売台数の2万台という数値は、なんと全体の3.8%に相当するのである。

どうも、この熾烈なシェア争いの中で、安鯖の販売台数というのは無視できないボリュームを持っているようである。
ということで、安鯖の裏には、各メーカーの熾烈な「シェア争い」が隠されているんじゃぁないかというのがこの話のオチ。マーケティングの観点からは「国内1位の出荷実績です」と言いたくなるだろうしねぇ。

誤解を避けるためにあえて書いておくが、1万円台を含む激安鯖を販売してるのはNECだけではない。HPも以前からかなり積極的な展開を行っているし、最近は富士通もそのラインに参戦してきた気配がある。DELLは安鯖の元祖だし、IBMも一時期参戦していたことがある。どのメーカーも考えることは同じである。

ちなみに、さっきリンクした今年上半期のシェアを見ると「出荷金額」ベースのシェアも書いてある。これで見てもNECは首位を確保しているので、NECが安売り乱売で形だけの首位を取った訳ではなさそう、という点も指摘しておく。安鯖から高付加価値サーバまでうまく商売されてるようで。

一方、台数では3位だった富士通が金額で2位に浮上してくると言うのも興味深い。富士通の安鯖はまだその層の需要を読み切れてないようで、微妙にスポットを外している気がする。これがより洗練されて出荷台数にも貢献できるようになってくると、台数でも順位をひっくり返すのかもしれない。

念のため

先ほど「NECの安鯖販売台数は年間2万台」と推計したが、はっきり数がわかっているタイプRBの8400台だけでも年間出荷台数の1.5%に達している。現在のそうにシェアが拮抗している状態では、この1.5%であっても無視できないボリュームである。

NEC Express5800/S70 タイプPJ
なんだかんだ割引で一台10,800円


3

  1. このwiki全体が安鯖情報専門というわけではない []
  2. あくまで、NTT-X Storeのような1万円台での放出は。正価の5万円程度であれば直販でいつでも入手できるようだ []
  3. このエントリ、タイトルのてにをはおかしいよなぁ。でも、真面目に書くとインパクト無いんだよね []